2009 Fiscal Year Annual Research Report
第二帝政期ドイツ自由主義の政治構想とその現代的意義-ギールケからプロイスヘ-
Project/Area Number |
19730098
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
遠藤 泰弘 Matsuyama University, 法学部, 准教授 (30374177)
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Keywords | 政治思想史 / 政治学 / ドイツ公法史 / ドイツ近代史 / 19世紀ドイツ / ギールケ / プロイス / ドイツ自由主義 |
Research Abstract |
本研究の最終年度にあたる本年度は、オットー・ギールケとその弟子フーゴ・プロイスの連邦国家論に関する昨年度までの研究を総括し、『法の流通』上に論文を発表した。また、社会思想史学会で開催された拙蓍『オットー・フォン・ギールケの政治思想』の合評会の討論者を務めるとともに、昨年度に取り纏めた独語論文を手直しし、『法と政治の現代的諸相』上に邦語で発表した。尚、昨年度中に刊行予定であったJahrbuch junge Rechtsgeschichte誌上の独語論文については、編集上の都合で刊行が今年度にずれ込んだため、本年度の成果として再掲している。 本年度までの研究の結果明らかになった点としては、次の3点を挙げることができる。すなわち、(1)ギールケの連邦国家論は、帝国と領邦国家が主権を共有するという独自の帝国モデルを提示することにより、統一国家でも国家連合でもないというドイツ帝国の複雑な国制の解釈として、ラーバントら支配的な実証主義国法学の解釈よりも高い説明能力をもっていた点(2)しかし、ギールケの連邦国家論は、領邦国家と自治体の原理的区別という理論的な課題に完全には応え切れておらす、プロイスはこの点の克服を目指していた点、(3)にもかかわらす、この克服を目指して行われたプロイスの主権概念批判は「主権概念の再導入により、政治における責任主体の拡散傾向に歯止めをかける」というギールケ国家論の利点を却って毀損するという逆説的な機能を果たした点である。すなわち、「不徹底」と評価され続けてきたギールケ国家論は、まさに「不徹底」であるがゆえの絶妙のバランスを保っていたのであり、この点をむしろ政治構想としての強みとして積極的に評価する余地が見えてきたのである。 ただし、このような評価をより精緻化するためには、三月前期以来のドイツ自由主義の系譜の中にギールケ国家論の淵源を辿り、ギールケ国家論を成り立たせた条件を探る作業が必要であり、本研究を遂行する中で、新たに取り組むべき課題を見出すことができた。
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Research Products
(4 results)