2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730176
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 和博 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10362633)
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Keywords | 賃金格差 / 国際貿易 / 経済成長 / 産業集積 / 技術革新 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本年度は、国際賃金格差と技術革新、産業集積に関する論文を執筆した。国間に賃金格差が発生している場合、市場の大きな国に企業が集積するとは限らない。この場合、技術革新は賃金が低く、企業が多く集積しているか、もしくは市場が大きく、企業が集積している国で行われる。財の輸送費用が低下するにしたがって賃金格差の影響力が大きくなり、賃金の安い国への集積が進み、技術革新もその国で行われるようになる。グローバリゼーションの促進に従い、経済成長率は、上昇、低下、再上昇の方向に変化する。その間、企業の立地は、分散から、先進国への集積、再分散、さらに低賃金国への集積という方向で変化する。この研究により、近年の国際貿易量の拡大が様々な国へ与える影響が名確になる。例えば、グローバリゼーションの拡大とともに、東アジア圏における日本から韓国、中国への技術革新センターのシフトが産業分布の変化とともに発生していること、それとともに経済成長率は域内全体では上昇していることのメカニズムが明らかにされる。自由貿易圏の確立等、国際貿易をめぐる政策には近年、注目が集まっているが、本研究は自由貿易化の促進が持ちうる影響についての定性的分析を行い、これまで注目されてこなかった、産業集積と経済成長に関する側面を明確にしている点で独自性を持ち、重要であると考えられる。本研究では資本市場が完全であり、生産資本が一瞬で国間を移動すると仮定しているが、これは現実的妥当性をやや欠いている。本研究に続く研究ではこの点を現実的にし、国際的に不完全な資本市場が経済成長と産業集積に与える影響を分析している。本研究と、次の研究で、財市場と資本市場の二つの意味でのグローバリゼーションの経済成長に対して持つ含意を分析している。
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Research Products
(2 results)