2008 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長・不平等・貧困における因果関係及びその経路に関する研究
Project/Area Number |
19730208
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西山 朗 Keio University, 総合政策学部, 准教授 (60374154)
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Keywords | 経済成長 / 経済発展 / 貧困 / 幼児死亡率 / 学校教育 / 女性の社会的地位 / クロス・カウントリー分析 / パネル・データ |
Research Abstract |
3年間の研究期間の2年目として、これまでの研究成果を深化・洗練させながら、以下の2編の研究論文を加筆修正した。それら2編の研究論文は、欧米の査読つきジャーナルに投稿中であり、現在審査結果を待っている段階である。 1)単著、英語論文、"Asymmetrieal Impact of Economic Growth on Infact Mortality in Developing Countries"本論文では、1962年から2002年の発展途上83力国のパネルデータを用いて、一人当たりGDPが幼児死亡率に与える影響を回帰分析した。所得の変化が幼児死亡率に与える影響は、好況期と不況期では、非対称であることを統計的に明らかにした。所得の上昇が幼児死亡率を減少させる効果は統計学的に頑健(robust)ではないが、所得の下落は幼児死亡率を引き上げる。経済成長と貧困削減の関係についての既存の実証研究においては、その関係の有無について対立しあう証拠が提示されてきており、いまだにコンセンサスが得られていない。この既存研究間の矛盾が、その分析対象となる地域や期間が経済成長期であったか経済停滞期であったかによって説明できることを、本研究は示唆している。 2)単著、英語論文、"The Paradox of Female Schooling in Development" 低所得国において、女性の学校教育の修得が貧困問題解決につながるであろうことは、広く認識されている。だが、それとは対照的に、実証分析においては、女性の学校教育が経済成長や貧困解消に影響を与えないという結果を示す文献が多い。このような「女性の学校教育のパラドックス」に注目し、クロスカウントリー・パネルデータによる回帰分析をおこなった。女性の学校教育が幼児死亡率低下に与える影響は限定的であるが、女性の社会的地位の向上が貧困削減に大きく貢献することを示す推計結果を得た。
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