2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730215
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
別所 俊一郎 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 講師 (90436741)
|
Keywords | 厚生損失 / 所得税 / 労働供給 |
Research Abstract |
公共政策は個人や企業等の経済主体の行動にしばしば影響し,「厚生損失」を発生させるといわれる.「公的資金の限界費用(MCPF:marginal cost of public funds)」とは,このような税収が1単位増加することによる実効費用の追加的な変化をさす.本研究では,大規模な個票データを用いて世帯の労働供給行動,とりわけ賃金弾力性について実証分析を行い,日本のMCPFの推計を行う.平成19年度は,一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターが行っている「学術研究のための政府統計ミクロデータの試行的提供」により,「就業構造基本調査」の個票を入手し,労働供給行動がどれほど賃金率に反応しているかについての実証分析を行い,研究論文としてまとめた.労働供給行動の分析には,労働供給関数や効用関数についてなんらかの仮定を置くことが必要になるが,ここでは線形の労働供給関数とCES型の効用関数の2種類を想定し,それぞれについて推定を行った.「試行的提供」では,データが実数ではなく階級や区間によって与えられているから,尤度関数を設定することによってこの点に対処した.その結果,いずれについても労働供給の非補償弾力性は低い値(0.06〜0.21)を得たが,代替効果と所得効果については,先行研究に比べても比較的大きな値となった.非補償弾力性の値が小さいことは先行研究とも整合的である.他方,補償弾力性と所得効果が大きいことは,課税によって発生する厚生損失が大きなものとなりうることを示唆しているが,その評価については今後の課題と言える.
|
Research Products
(2 results)