2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730215
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
別所 俊一郎 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 講師 (90436741)
|
Keywords | 厚生損失 / 所得税 / 労働供給 |
Research Abstract |
公共政策は個人や企業等の経済主体の行動にしばしば影響し,「厚生損失」を発生させるといわれる.「公的資金の限界費用(MCPF : marginal cost of public funds)」とは,このような税収が1単位増加することによる実効費用の追加的な変化をさす.本研究では,大規模な個票データを用いて賃金弾力性について実証分析を行い,日本のMCPFの推計を行った.21年度は,一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターを経由して「就業構造基本調査」の個票を入手し,労働所得税に伴うMCPFを推計するとともに,この情報から最適な線形所得税を推計した.労働供給行動の分析には労働供給関数や効用関数についてなんらかの仮定を置くことが必要になるが,ここではCES型の効用関数を想定した.また,equivalent incomeを用いて社会厚生関数を明示的に考慮していくつかの不平等度に対して,最適な線形所得税と負の所得税を求めた.働き盛りの単身世帯を対象として推計したところ,次のことが明らかになった。現行税制と比べて高所得者層に減税となるようなものも,増税となるようなものも,社会的な不平等回避度如何によって正当化されうる.不平等回避度が高いばあいには,現行制度よりも税制の累進度を高めることが望ましいこととなるが,そのときには全体の平均では労働供給が抑制され,税引前所得が減少する.ただし,いずれの結果においても最も所得の低い階層には減税することが望ましい.また,社会厚生の評価は,最適な線形所得税が現行の累進所得税よりも高いとの結果も得た.
|
Research Products
(2 results)