2009 Fiscal Year Annual Research Report
投資家の情報戦略が証券価格変動に与える影響の調査研究
Project/Area Number |
19730225
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川西 諭 上智大学, 経済学部, 教授 (90317503)
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Keywords | ファイナンス / 非対称情報 / 行動ファイナンス / 動学モデル / 投資情報 |
Research Abstract |
多くの技資家が投資対象となる資産の価値に関して、より精度の高い投資情報を獲得する努力をしている市場では資産の価格はその本源的価値(ファンダメンタメンタル価値とも呼ばれる)に近い値をとると考えられる。問題は、そのような市場ではもはやコストをかけてまで投資情報を獲得する動機が失われてしまうことにある。結果として、投資情報を獲得する努力をしてもしなくても投資家にとって無差別であるような弱い均衡状態しか市場には存在しないことが知られている。しかし、均衡状態が弱いことがサブプライム問題のような市場の不安定性を説明しうるかどうかという議論はこれまで十分になされてこなかった。 本研究の成果は、均衡状態が弱いだけでは必ずしも市場の不安定性を説明することができないが、複数の質の異なる投資情報が存在する市場で循環的変動のような不安定性が生じうることを理論的に示したことにある。 この理論モデルとサブプライム問題をはじめとする金融市場の混乱との関連性を強調する方向で論文を書き直し、平成22年8月に京都大学経済研究所,首都大学東京社会科学研究科,同志社大学ライフリスク研究センターが共催する国際ワークショップ、平成23年3月に査読審査付きの国際学会である米国Midwest Finance Associationの年次大会で論文の報告をした。 投資情報獲得戦略をめぐる投資家間の駆け引きが投資戦略の多様性と市場の不安定性を生み出す可能性を指摘する研究結果は金融危機のメカニズムの解明への糸口になるとのコメントを受けた。 今後は理論予想の検証やデータに基づく市場分析を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)