2009 Fiscal Year Annual Research Report
植民地経済の運営と官民の認識-植民地台湾像の再検討-
Project/Area Number |
19730241
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
河原林 直人 Nagoya Gakuin University, 経済学部, 准教授 (90434589)
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Keywords | 経済史 / 台湾史 / 植民地 |
Research Abstract |
本年度は計画の最終年度であり,本研究課題に関する成果の更なる公表に向けて作業を進めた。具体的には,前年度の研究成果(松田・やまだ編『日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚』思文閣出版,2009年)を踏まえて,1935年に台北で開催された「熱帯産業調査会」に関する論考を出すことを目標としてきた。 本研究の課題は,それぞれのイベントについての詳細な事実関係を解明するのみならず,本研究課題の申請時に指摘したように,他の大規模イベント(臨時産業調査会,臨時台湾経済審議会)との関連の有無を探ることにある。今年度は,論文執筆に際して最も重要な資料である『台湾日日新報』(DVD版)を活用する予定であったが,肝心の「熱帯産業調査会」開催期(1935年10月)のデータが欠落しており,作業が一時期暗礁に乗り上げた状態になってしまった。そして,当該資料の販売元から欠落分のデータを入手できたのが2010年2月という年度末間際であった。 以上の事情から,遺憾ながら今年度中に論文として研究成果を公表する時期を逸してしまった。他の資料で補完しつつ作業を進めることも検討したが,本研究の目的である他イベントとの関連という点に関する情報が得られず,そのまま執筆を続けても目的を充分に達し得ないと判断し,やむを得ぬ措置として所属先のディスカッション・ペーパーで成果の途中経過を公表する形をとった。 充分に議論を詰めていないが,このディスカッション・ペーパーでは植民地行政府の主管官庁である拓務省の存在と外務省との角逐(省益争い)の実態を浮き彫りにすることができた。そこには,植民地単体での植民地運営に関する構想を見るだけでは捉えられない「日本帝国」の姿が垣間見られる。こうした官庁のつながりを視野に入れた上で,植民地官僚による植民地経営の構想と現実をより詳細に分析する必要性を問題提起することで一つの区切りとしたい。
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Research Products
(2 results)