2009 Fiscal Year Annual Research Report
日米中小法人の役員給与支給におけるモラルハザードの発生と防止に関する研究
Project/Area Number |
19730297
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
櫻田 譲 Hokkaido University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10335763)
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Keywords | 法人税法 / 役員報酬 / 役員退職慰労金 / 中小法人 / 実証分析 / 持株比率 / 特殊支配同族会社 |
Research Abstract |
かねてより廃止要望が少なくなかった特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入規定(法人税法第35条、以下、「法35」と略称)は紆余曲折を経て結果的に廃止となった。法35の存続の是非をめぐる議論は、主に「経費の二重控除」を問題視したことにあるが、持株比率90%以上という零細な1人オーナー法人への増税となっている現実から、中小法人の活性化を阻害するであろう点も問題であった。役員給与に関する法人税法規定については、平成18年改正において機動的な役員給与の支給が制約された上に、中小法人では利益連動給与の支給が実質的に閉ざされている。このようにみてくると、わが国法人税法が前提とする中小法人における役員給与の支給行動は、お手盛りが横行しているとの課税側の憶測が存し、ややもすると過度の締め付けが行われているようである。とはいえ、法35は法人に対する持分の多寡に役員報酬の損金算入限度額を連動させるため、持株比率と役員報酬の間の相関を前提としており、実態に即した課税であるとの論拠も成り立つかも知れない。そこで本稿では、支給される役員報酬と持株比率の相関が、いかなる程度認められるのかについて実証水準で明らかにし、課税側の課税根拠を検証してみた。その結果、中小法人経営の活力を阻害する法35ではあるが、役員報酬の支給額と持株比率の多寡に相関を認めた上での課税根拠を裏付ける分析結果が導出された。 本研究では法35の存続理由や課税の根拠について主に課税側の立場で実証的に検証したが、役員報酬と持株比率の多寡について正の相関を認める実態が今後も継続するとすれば、廃止された法35がより洗練され、説得的な課税計算を纏って再登場する可能性も指摘した。さらに従来、業務主宰役員のみの増税で済んだものが、その適用範囲を拡張し、業務主宰役員関連者にまで及ぶことも考えられ、中小法人への一層の締め付けとならないように今後を見守る必要性も併せて指摘している。
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Research Products
(1 results)