2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730301
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
北口 りえ Komazawa University, 経済学部, 講師 (00403957)
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Keywords | 推計課税 / 租税制裁 |
Research Abstract |
本年度は、逋脱所得の法的構造および算定構造についての研究を行った。まず、逋脱所得の法的構造については、九州経済学会で報告し(「通脱罪の法的性質と保護法益」2009年12月5日)、「逋脱罪の法的性質と保護法益-逋脱罪規定の歴史的変遷を通して」(駒澤大学経済学論集41巻4号、2010年3月)を公刊した。本論文では、逋脱罪がどのような性質の犯罪であり、何を保護の客体としているのかということについて、その歴史的変遷を踏まえて検討した。そして、現在、税制調査会において通脱罪の厳罰化について検討されているように、逋脱罪は反社会的、反道徳的な悪質性の高い犯罪としてより一層考えられるようになってきており、通脱罪の保護法益については、国家的法益たる「租税債権」に加えて、社会的法益たる「申告納税制度の維持」も含まれるのではないかと論じている。 次に、通脱罪の算定構造については、日本会計研究学会で報告し(「逋脱所得の算定構造」2009年9月4日)、報告で得られたコメント等を基に加筆・修正し、雑誌「会計」に掲載する予定である。本論文では、まず逋脱所得の成立範囲について、所得の可分・不可分性という観点から検討し、次に逋脱所得の算定方法について検討している。逋脱犯の成立範囲については、「租税を免れること」が構成要件として定められていることなどから、秘匿した所得の総額についてのおおよその認識があれば所得全体について逋脱犯が成立するとする概括的認識説が妥当であると考える。 また、逋脱所得の算定方法については、どのような所得秘匿行為によってどの範囲の税を免れたかということは個々の取引を明らかにすることによって可能となるため、原則としては損益計算法によるべきで、財産増減法は代替的立証手段として位置付けられ、推計法については、租税逋脱が刑事罰であるから税務行政上の「推計」は許されないと考えるのが妥当であると結論付けている。
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Research Products
(5 results)