2007 Fiscal Year Annual Research Report
トヨタと日産の労働現場の比較研究-現場職制経験者に焦点をあてて-
Project/Area Number |
19730329
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊原 亮司 Gifu University, 地域科学部, 准教授 (60377695)
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Keywords | トヨタ / 日産 / 自動車産業 / 労働現場 / 職場 / 職場文化 / 統合 / 力学 |
Research Abstract |
トヨタと日産の現場の参与観察を踏まえて,本年度は,現場経験の長い労働者への聞き取り調査を始めた。前者では,一時点から職場構造を明らかにしたのに対して,後者では,いわば「定点観測」してきた労働者に話を伺うことにより,職場の通時的な把握・分析を行う。 両社の長期勤務者に話を伺うと,参与観察同様,トヨタの労働者は職場に強く「統合」されていることが分かる。日産の労働者は,会社に対して一定の「距離」を置いている様子が見られた。もちろん,トヨタと日産の労働者と一口にいっても,様々な労働者がいるが,全社レベルで共通する特徴が浮かび上がった。 トヨタの場合は,「学園卒」の役割が大きい。彼らが職場の中心となり,他の労働者を現場に統合する上で非常に大きな役割を果たしている。トヨタ学園卒の重要性に関しては,周知の事実であるが,時代により,職場で求められている役割に違いがあることも分かった。 日産は,「組織統合」が現場の「統合」に少なからず影響を与えてきたと考えられる。日産とプリンスの合併と,ルノー傘下への組み入れである。それぞれ1966年と1999年に行われた「統合」が'現場レベル'に重要な影響を及ぼしてきたことが,労働者の話から想像される。具体的に言えば,資本の論理による統合は,現場の「融合」を意味するわけではなく,むしろ看過ぞきない「軋礫」や「歪み」を引き起こしてきた。組織合併が,日産の現場の「力学」や文化に強い影響を与えてきたのではないかという仮説の導出が,本年度の研究成果である。
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