2007 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者虐待事例における家族内構造の変容に効果的なソーシャルワーク実践スキルの探索
Project/Area Number |
19730377
|
Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
一瀬 貴子 Kansai University of Social Welfare, 社会福祉学部, 准教授 (20368567)
|
Keywords | 家庭内高齢者虐待 / ソーシャルワーク実践スキル / 家族システム内機能・構造の変容 / 虐待者への情緒的支援 / 相互作用パターンのトラッキング / ミラクルクエスチョン / スケーリングクエスチョン / 虐待者の定位家族との関係改善 |
Research Abstract |
【研究目的】 家庭内高齢者虐待発生事例の家族システム内機能や構造変容を目指す社会福祉士のソーシャルワーク実践スキルの活用頻度や構造を明らかにし、家族システム内機能や構造変容への効果を検討する。 【研究手法】 ソーシャルワーク実践スキル評価尺度を作成する準備段階として、平成19年12月に、地域包括支援センター102箇所の社会福祉士に対する質的調査を実施した。有効回答数は25名であった。次に、質的調査の結果を受けて作成した「家庭内高齢者虐待発生事例の家族システム内機能や構造の変容を図るためのソーシャルワーク実践スキル評価尺度(35項目)」の有用性を検討するため、平成20年3月に、地域包括支援センター435箇所の社会福祉士を対象とした質問紙調査を実施した。有効回答数は120名であった。 【研究結果】 ソーシャルワーク実践スキル評価尺度35項目の因子分析の結果、第1因子は「虐待者との信頼関係構築のため共感を示した」「虐待者の考えや感情を反映し理解を示した」など14項目から構成され、「虐待者に情緒的支援や情報提供するスキル群」と命名した。第2因子は「虐待原因を、高齢者と虐待者の相互作用パターンを分析して明らかにした」「これまでのストレス対処戦略が、かえって問題を持続させていることを理解させた」など6項目から構成され、「虐待原因として虐待者や高齢者の相互作用パターンを分析するスキル群」と命名した。第3因子は「問題行動処理方法を家族成員に伝えた」「虐待原因を、家族の感情的雰囲気が問題であると認識させた」など6項目から構成され、「相互作用パターンの変容方法を家族成員に提示するスキル群」と命名した。第4因子は「虐待者・高齢者・家族成員にとって問題解決状態とはいかなる状態かを確かめた」「問題解決状態を目指すための資源・対処を虐待者・高齢者・家族成員と考えた」の2項目から構成され、「問題解決を図る質問技法を用いるスキル群」と命名した。第5因子は「虐待者の定位家族での価値観が、現在の価値観に影響を与えていることを理解させた」「虐待者と過度に情緒的密着している家族成員と、適切な情緒的距離をとる方法を考えた」の2項目から構成され、「虐待者と定位家族の関係変容を図るスキル群」と命名した。第6因子は「虐待者や家族成員の介護を賞賛した」である。累積因子寄与率は61.2%である。スキル活用頻度の平均スコアは、第1因子・第4因子・第2因子が高かった。家族システム内機能や構造の変容に与える影響を検討したところ、第3因子の「相互作用パターン変容方法を家族成員に提示するスキル」や第2因子の「虐待者や高齢者の相互作用パターンを分析するスキル」は、家族成員間の相互作用パターンや家族成員の虐待原因の認識共有度、家族内凝集性や適応性の改善につながった。
|
Research Products
(1 results)