Research Abstract |
本研究は, 幼児期および児童期における謝罪の発達的変化および発達の規定因を明らかにし, 葛藤介入の在り方を考える上で有用な情報を提供することを目的としている。 20年度では, 以下の2つの研究を行った。まず研究1では, 違反発覚の有無という性質の違いを持つ約束違反場面とルール違反場面において, 加害者の行動予測に罪悪感がどの程度関連するかを検討した。加害者の行動についての回答を4カテゴリーに分類し, 各カテゴリーにおける人数の偏りに罪悪感群による違いが見られるか否かについて違反場面別に検定した結果, 約束違反場面では, 罪悪感認識の高低によらず謝罪が多く選択された。一方, ルール違反場面では, 罪悪感低群では自己中心的行動やその他を回答した者が多く, 告白・補償行動を回答した者が少なく, 反対に, 罪悪感高群では, 告白・補償行動を回答した者が多く, 自己中心的方略やその他を回答した者が少なかった。したがって, 児童は違反発覚が明瞭な場面では, 謝罪を解決に有効な方略であると認識し, 罪悪感認識の程度によらず謝罪を選択するが, 違反発覚が不明瞭な場面では, 罪悪感は, 言語表現のみの謝罪ではなく, 謝罪よりもより高次の解決方略である告白や補償行動など向社会的方略を規定することが示された。研究2では, 違反について自己と他者が負うべき責任の高さが同等である状況で, 主人公の行動についての児童の予測に性別や罪悪感認識の有無による違いがみられるかを検討した。主人公の行動についての回答を4カテゴリーに分類し, 各カテゴリーにおける人数の偏りに性別と罪悪感群による違いが見られるか否かについて検定した結果, 貸与を回答した者は, 罪悪感低群では男児よりも女児で多く, 男児では低群よりも高群で多かった。反対に, 貸与拒否を回答した者は, 罪悪感低群では女児よりも男児で多く, 男児では罪悪感高群よりも低群で多かった。このことから, 自己と他者に認められる違反責任の割合が同等である場合, 罪悪感は謝罪の規定因とはならないが, とりわけ男児では, 貸与などの向社会的方略を規定する重要な要因であることが明らかとなった。
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