Research Abstract |
本年度は,小学生が読書を行う際の眼球運動の基礎データの取得と解析を目指した.具体的には,小学校3年生・5年生にそれぞれの学年に対応した内容のテキストを読んでもらい,読書中の眼球運動を測定した.テキストに含まれる単語の内,漢字を含む内容語,ひらがなのみの内容語,ひらがなのみの機能語の3カテゴリーについて,停留時間の発達的変化および成人データとの比較を行った.その結果,英語を対象とした先行研究の結果を繰り返して,発達に伴って,読み時間が短縮される一般的な傾向が確認された.それに加えて,本研究独自の発見として,ひらがな表記の内容語については,小学校3年生よりも5年生で読み時間が短くなることが示されたが,漢字表記の内容語では,そのような読み時間の短縮が見られなかった.この結果から,ひらがな文字列から単語を抜き出す能力の向上を示すと示唆された.漢字を含む内容語の読み時間が,なぜ短縮されないのかは,今後,詳しく検討する必要がある.また,成人データでは,どのカテゴリーについても,小学生よりも短い読み時間が一貫して見られたが,成人が,小学生のテキストを読む場合,普段目にする表記とは異なるひらがな表記の単語が複数見られることが判明した.そのため,同一内容で,普段目にする表記で記述された文章を読んでいる時のデータを追加取得した.今後は,さらに解析を進めていくと同時に,単語の停留位置についても解析する予定である.
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