2007 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の自立を促進する短期心理支援法の開発および地域援助
Project/Area Number |
19730449
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
佐々木 直美 Hiroshima International University, 総合人間科学研究科, 講師 (00341230)
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Keywords | 高齢者 / 短期心理支援 / 過去 / 現在 / 未来 |
Research Abstract |
H県の在宅高齢者4名(男性2名:Aさん・Bさんともに70歳代),女性2名(Cさん60歳代,Dさん80歳代)を対象に,3回(2週間に1回:90分)に渡り,1回目「子どもの頃について(過去)」,2回目「家族や仕事について(現在)」,3回目「いま,これからに関して語りたいことを語る(未来)」をテーマとしてグループ形式で面接を行った.筆者がコンダクターを務め,1回目と2回目は,メンバーから否定的な語りが出てきた場合には,他に肯定的な出来事がなかったかどうか考えてもらうように促したり,その方の体験や考えについて人生に影響を与えたと考えられる良い言葉や考えが出てきたときには,メンバー自身の気づきを促すようにその言葉や考えを繰り返した(短期心理支援法). 3回終了後,Aさんは「自分の過去や現在の体験や記憶に広がりが出てきた気がする。これまで生きてきたことで良かったのだと感じる」と語り,Bさんは「こうして自分のことについて考えることは,自分の人生の区切りになる.そして将来への準備が出来る」,Cさんは「未来はどうなるか分からないが,今の自分の考えを持って生きていけば生きられる気がする.そしてその先に自然と死が待っている気がする」と語った.この介入で,過去を振り返り,それに肯定的な意味づけをすることで,それが「体験の広がり」,「人生の区切り」,「未来の準備,死」につながっていったと考えられた.しかし,Dさんは「家族に助けられて今は生きている.周りの友人は行くところがなくなって辛い思いをしている人もいる.私は,目や耳も聞こえなくなり,この先どうなるかと思っている」と語り,その考えは変わらなかった.このことからDさんは,他のメンバーのように考えや体験が進んでいかず置き去りにされたような感覚や寂しさを持ったようにも感じられ,この介入法の適応の年齢を吟味する必要性が示唆された.
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