2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19730456
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
川島 尊之 Teikyo Heisei University, 健康メディカル学部, 講師 (50401203)
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Keywords | 実験系心理学 / バーチャルリアリティ / 神経科学 |
Research Abstract |
聴覚が計算論的に不良設定問題である音源分離の問題を解決するためには, 処理の最初の段階で音入力をいくつかの特徴の次元で分析し, 次にその分析結果を適切に統合する必要がある。分析する特徴としてはトノトピックな周波数に加え, 振幅変調, 両耳間時間差などの音源位置手がかり, 周波数変調などが有力な候補である。こうした特徴の分析は自動的, 並列的に行なわれると仮定する場合が多いが, こうした過程がどの程度トップダウンな注意の影響を受けるかについては未だ明らかになっていない点が多い。 今年度は特に振幅変調の検出過程がどの程度トップダウンな注意の影響を受けるかについて, 振幅変調に対する順応の程度が順応音に注意を向けたときと向けないときでどのように変化するかを指標として研究した。その結果同じように順応音を提示しても, 注意を向けないときには, 注意を向けたときに比して残効量(順応の度合いを示す量)が減少した。これは聴覚系が音入力から振幅変調を分析する過程に注意が影響することを示しており, 特徴を分析する段階が完全に自動的ではなくトップダウンな処理の影響を受け得ることを示唆している。この知見は音源分離過程の心理学的メカニズムがこれまで考えられてきたよりも状況に応じて柔軟に働いていることを示すと同時に, 音源分離過程を正しく理解するためにはその初期的過程(特徴検出の過程)の様々な側面について, トップダウンな要因との関係を詳細に研究していく必要があることを示している。
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