2007 Fiscal Year Annual Research Report
行為と環境の変化の知覚的結合過程に関する実験心理学的研究
Project/Area Number |
19730459
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
光松 秀倫 Nagoya University, 情報科学研究科, 助教 (40377776)
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Keywords | 実験系心理学 / 目的指向型行為 / 視覚運動 / 共通の符号化 |
Research Abstract |
本研究では、人間の行為と環境の変化の知覚がどのような処理過程によって心理学的に結合しているのかを検討した。平成19年度は、手の動きが視覚的な連続運動刺激の方向知覚に与える現象を取り上げ、この現象が、適合性・フォワードモデル・連合学習等の説明モデルで説明可能かどうかを検証した。研究結果から以下のことが示唆された。1)多義的な運動刺激の方向は、手の動きと同じ方向に知覚されやすい。2)手が刺激の運動を制御するという制御関係の存在が現象の生起に必要である。3)刺激と行為の動きの対応づけに関して、新奇な対応関係を導入した条件では、手の効果が生起しなかった。これは、実験期間だけでは、実験場面で導入した新奇な対応関係を学習できなかったために、手の効果が現れなかったと考えられた。換言すると、刺激と行為の対応づけが、日常的な経験によって十分に習得されている必要があることを示唆している。以上の結果は、適合性の説明モデルを拡張した枠組みである、知覚と運動の「共通の符号化」によって説明が可能であると考えられる。この枠組みでは、知覚と運動の表象が共通であることを想定している。多義的運動を知覚情報だけから一意に解釈することができないために、行為の運動指令で活性化した空間表象を、知覚判断に利用したと考えられる。また、この枠組みでは、記憶内に貯蔵された行為と環境の変化のリンクが、目的ベースで活性化されることを想定している。現象の生起が、制御という目的に依存したことは、この枠組みの想定と一致する。一方、フォワードモデルや単純な連合学習は、記憶内リンクの活性化が目的ベースであることを想定していないことから、「共通の符号化」の枠組みが説明モデルとして、より適切であるノと考えられた。
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