2007 Fiscal Year Annual Research Report
評定のもつ逆説性を乗り越える新たな教育評価論の枠組に関する研究
Project/Area Number |
19730497
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤本 和久 Keio University, 教職課程センター, 講師 (10338220)
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Keywords | 評定 / 教育評価 / 教師の権力性 / 発達懇談会 / フランス:スウェーデン:オーストラリア / フレネ教育法 / 教科観 |
Research Abstract |
6〜7月にかけて、校内研究でかかわっている綾瀬市立綾北中学校において、計画に示した量的調査「教科観アンケート」を中学1年生と2年生で実施した。その結果、英語科・国語科・数学科については、その教科のイメージが試験の形式と親和性の高いものとして生徒たちはとらえているということが見えてきた。たとえば、国語科のイメージは「漢字の書き取り」としている生徒が、46.2%にも達しており、そのことをふまえた上で、いかに、教科観転換を目指していくか(教師の願いを反映させていくか)を軸に、担任の教諭と授業開発をはじめるといら手だてを模索することがでた。 他方、評定を廃した学校に訪問・視察することで、(子どもの可視範囲から)評定を排除した理由およびその課題を浮かび上がらせることができた。日本国内では横須賀市立大塚台小学校が、日常的なファイル形式で評価を実施することにしており、きめこまかな教師たちの「みとり」の努力がなされているが、一方で保護者たちは高学年になるにつれて学期ごとの評定を望む声が高まり、その調停に苦心している実態があった。国外では、スウェーデンが1994年以降、評定を14歳以下で廃止をし、その代わりに定期的な「発達懇談会」という3者談を重視していたが、その懇談会での「型」がある種の権力性を内包してしまっていることに一部の研究者や教師たちは自覚的であり、この点、本研究の課題意識に照らしてもさらなる追究が必要である。オーストラリア・ヴィクトリア州では、中等教育において評定がなくなり、「ポイント制」に移行した。初等教育でも、「学びとしての評価」が提唱され、学習者自身の評価参加が始まったところであった。しかし、評価には「文脉」が必要であることが、各学校段階で明確であった。フランスではフレネ教育を採用している公立学校(教師)により評定が排されていた。そのかわり、日々の学習計画表を子どもの自律性を励ましつつ書き込ませることで着実な学びのみとりが教師・子どもの双方にとって可能であることが見受けられた。
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Research Products
(2 results)