2008 Fiscal Year Annual Research Report
評定のもつ逆説性を乗り越える新たな教育評価論の枠組に関する研究
Project/Area Number |
19730497
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤本 和久 Keio University, 教職課程センター, 准教授 (10338220)
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Keywords | 評定 / 教科イメージ形成 / 教科問相対的価値付け / 授業研究 / 潜在的カリキュラム / フランス / 教育評価 |
Research Abstract |
今年度は神奈川県下の3校の小学校と1校の中学校の子どもたちにその教科イメージに関するアンケートを行った。小学校高学年や中学校などではすでに評定が現実的にハイステイクス性を有しており、それへの心的態度を自覚的に問うことが日常的な実践を阻害する可能性もあるとの配慮から、「教科イメージ」と「教科間相対的価値付け」などを質問紙で問うた。その結果、その背景にあるものの1つとして、子どもたちが受容している評価観がとりだせると同時に、学習指導要領(計画としてのカリキュラム)で示された配当時数がダイレクトに教科イメージ形成に影響をあたえていることが共通に見いだせた。他方、小学校3校については、校内授業研究は教科や領域に縛られることなく、授業という場での子ども同士の関わり合いや学び合いをテーマにしてここ数年取り組んでいる。これまで、校内授業研究における意義は、教師の専門性のありようや教師成長論にあるという枠組みでなされる先行研究が多いが、そこで考察・議論されてきた研究が、教科観や評価観にかかわる潜在的カリキュラムの側面にも踏み込んで、子どもの実際の受けとめと具体的に関係があることが見いだせた。この作業を通じて、子どもたちが生々しく抱いている、評定を中心とした一連の評価活動への意識を転換しうる新たな教育評価論の枠組が教師たちの授業研究のあり方との関連で見いだせる道筋が確認できたといえる。国内における量的・質的調査と併行して平成20年度末に訪問した南フランスの4つの小学校の視察を通して、評定を廃したうえで実施されている日常的な評価方法が子どもたちの学びに対する圧力とはならずに「支え」となっている現状を確認できた。子どもの受け止める評価観や教科観の形成が教師集団による授業研究と関連があることと、実践場面での評定自体の排除とにある可能性を見いだしたことが今年度の成果である。
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Research Products
(1 results)