2009 Fiscal Year Annual Research Report
評定のもつ逆説性を乗り越える新たな教育評価論の枠組に関する研究
Project/Area Number |
19730497
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤本 和久 Keio University, 教職課程センター, 准教授 (10338220)
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Keywords | 評定 / 教育評価 / 授業研究 / 教科観 / 評価観 / かくれたカリキュラム / 発達懇談会 / 当事者性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度収集した神奈川県下の3つの小学校および1つの中学校の量的調査の結果をまず分析した。その結果、子どもたちが有している教科観・評価観は、評定や選抜につながる試験に対応するためにその形式や技術を学ぶことを通じて得られたイメージをそのままそれぞれの教科のイメージとして有していることが読み取れた。また、教科間の相対的価値付けは、学習指導要領で配分されている標準授業時数の順とほぼ符合することもわかった。その一般的傾向を少しでも緩和させたり乗り越えたりしている現場の特徴は、いまだ仮説的ではあるが、授業研究の工夫がなされている学校や、民間研究団体・学会等で積極的に活躍する教師たちの学級の子どもたちである。今年度は神奈川県にある2つの小学校と一つの民間研九団体(日本生活教育連盟)に注目し、その実態を調査するともに、当事者たちへの聞き取り調査もおこなっている。ただし、この調査は丁寧な参与観察と各節目での教師へのインタビュー、子どもへのアンケートなどを要するため次年度も継続的に展開していくことになる。他方、2009年9月にスウェーデンの小学校・中学校を訪問・視察し、評定を排したことにより新たに重視されることになった発達懇談会の実態について、現場の教師や現地の子どもたちに詳細に聞き取り調査をおこなった。その結果、管理職や現場の教員たちは発達懇談会の場を評定にかわりうる有効な評価場面と想定していることがうかがえたが、子どもたちにとってみればやや形骸化している傾向が読み取れた。この事実・実態はきわめて重要で、スウェーデンそのものの政策転換とは別に、評価と学習とが切り取られた場面設定ゆえに乖離してしまうことを示唆しており、この要因分析をもとに当事者性のある評価場面設定の諸条件について考察する必要性が用意されたといえる。
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Research Products
(1 results)