2010 Fiscal Year Annual Research Report
評定のもつ逆説性を乗り越える新たな教育評価論の枠組に関する研究
Project/Area Number |
19730497
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤本 和久 慶應義塾大学, 教職課程センター, 准教授 (10338220)
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Keywords | 教育評価 / 評定 / みとり / 授業研究 / アクション・リサーチ / かくれたカリキュラム / 評価観 / 教科観 |
Research Abstract |
今年度は、前年度までの量的調査や海外視察等の結果を踏まえて、現場の教師と対話を重ねて具体的実践のなかに評定に依存しない評価方法を見出すことを主眼とした。具体的な実践のなかでの教師のみとりの様相とそれが子どもへの評価圧力として潜在カリキュラム的に機能していない事実を参与観察で確認した。評定に依存した試験法などの評価方法ではなく、教師が現場で瞬時に子どもの学びをどのようにみとり、子ども理解やカリキュラム構想に活かしているのかという点を中心に教師たちにインタビューをすると同時に、それこそが実践のなかにおける教育評価行為であるという自覚を共有にするに至った。また、このような教育評価の視座については、日本中の小中学校で実施されている校内授業研究でこそ現場の教師たちにより集中的に検討されていることに注目し、具体的な授業研究協議を談話分析するなどして、何がテーマやキーワードとなり語り合うことが子どもの学びの姿の把握につながっているのかを考察した。その結果、研究協議のなかで一般的な教材論や学習指導案検討をおこなうよりも最初は子どもの姿を客観的事実として物語るスタンスから始め、徐々にその解釈が同僚間で提示される協議へと変容していくなかで教師たちの子どもをみとる目に対する自覚が高まっていることがわかった。評定のもつ逆説性については、子どもたちへ量的調査や授業観察を通じた談話のなかで容易に見出しうるが、それは教師自身が授業者として日常的に授業実践をおこなっているなかで、各人がとらえた子どもの姿を言語化することで、まずは教師が評価観を転換させていく手段となることが明らかになった。それが子どものもつ評価観の転換にどう結びついていくかということについてはさらなる観察やアクション・リサーチが必要となる。
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Research Products
(2 results)