Research Abstract |
今年度は,本研究において協力関係にある少年鑑別所教官の助言のもと,14歳から19歳までの男女収容生徒87名を対象として実施した学級環境測定尺度のデータ分析をおこない,子どもの学校場面における逸脱行動と関連する環境認知要因について考察した。その結果,非行少年の「現実の学級」に対する認知と,彼らが好ましい・望ましいと捉える「選好環境」の状態・程度,および両者の差異が示唆された。具体的には,「教師の支援」,「学業の負担」の学級環境要因において,特徴的な認知の傾向が認められた。 同時に,首都圏の一般公立中学校生徒121名に実施した学級環境測定尺度及び学校生活を支援する要因についての分析をおこなった。その結果,スクールカウンセラーについては,(1)教師とイメージが近似する,(2)心の専門家としての期待が高い,(3)守秘義務はほとんど理解されていない,等が示された。また,(4)スクールカウンセラー・両親・教師等大人全般に親和の高い子どもは,「教師の支援」についても評価が高い,(5)悩みを他者に相談しない理由によって,「学級での孤独感」が有意に異なる,等が示された。特に,悩みは人に頼らず自力で克服すべきいう信念を持ち,実際に学校生活において相談相手がいない子どもの孤独感が最も高かった。 これらの非行少年と一般中学生の選好・現実の学級環境に対する認知の特徴は,子どもの問題行動を予防・早期指導するための学級環境要因の解明,および次年度以降に取り組む尺度構成に向けて、意義ある基礎資料となった。
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