2008 Fiscal Year Annual Research Report
学校場面における子どもの逸脱行動と現実・選好学級環境認知の関連
Project/Area Number |
19730525
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
平田 乃美 Hakuoh University, 教育学部, 准教授 (20308224)
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Keywords | 学級環境 / 少年鑑別所 / 非行 / 環境認知 / 選好環境 |
Research Abstract |
本年度は, 海外の教育環境測定指標の日本語訳作成の継続, および『非行少年の学級環境認知における現実と選好の乖離』, 『子どもの適応と学級環境認知における現実と選好の乖離について』の2論文を作成した。前者は投稿中のため, 後者の要約を以下に述べる。後者論文では, 現実Actualおよび選好preferred環境測定フォームを用いたこれまでの調査データ(1. 大学生の学力と授業ニーズ, 2. 公立総合選択制高校, 3. うまく機能しない, 難しい公立中学校, 4. 少年鑑別所)を, 子どもの適応と学級環境認知における現実と選好の乖離という視点から再分析した。結果, これらの実践例において, Hunt(1975)の人間-環境適合説に基づく主要な先行研究の知見との合致点を見出した。これらを踏まえて, 現実および選好する環境に対する認知の生成要因について心理学的な概念での説明を検討した。選好環境は客観的に判断されたidealな状態ではなく個人が好ましいと期待するpreferredな状態であるため,その程度の決定には, 個人の達成動機要求水準や原因帰属, 統制の所在Locus of Controlにおける特定期待specific expectancy, 一般期待generalized expectancyなど, 既存の枠組みで説明可能な要因が関わると考えられる。学校・学級は子どもにとって日常的な場面であるから, 選好環境は事態に特有な特定期待と理解することもできる。特定期待の効果が強いのであれば, 要求水準や原因帰属とは特性が異なる可能性がある。一方, 学校生活は類似経験が豊富に想起されるため新規の状況においても一般期待が効果をもっとすれば, 選好環境の程度は環境操作など外的な働きかけで変動させることが困難になる。この点については, 次年度も継続して精査する。
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