2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19740015
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市原 由美子 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (80372689)
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Keywords | 整数論 |
Research Abstract |
保型L関数の関数等式の折り返しの点のおける値、特にnon-vanishingや零の位数に関する問題は整数論において重要な研究対象である。楕円曲線の有理点の集合は有限生成アーベル群であり、そのランクが重さ2の保型L関数の関数等式の折り返しの点での零の位数と一致するという予想があることもあり、特に重さ2の保型L関数は重要な研究対象である。しかし、楕円曲線との関わりという点に注目すれば、保型形式の中でもprimitive formに限って議論されるべき問題でもあるのだが、保型形式の空間に注目した時、primitive formに限定するよりも保型形式の基底全てを考えた方が扱いやすいため、primitive formに付随するL関数に限ってnon-vanishingが研究された結果は少ない。また、primitive formに付随するL関数を扱ったものでも、多くの場合はレベルが素数の場合という限られた条件下で研究が進んでいた。一般のレベルでnon-vanishingの問題を考える足掛かりとしては、レベルがsquare freeの場合にold formの空間に関する直交基底を決定することでprimitive formに付随するL関数のnon-vanishingを調べることがIwaniec, Luo and Sarnakにより提案されたが、複雑な議論のためか、この方向で研究が進んでいるとは言い難い。しかし、Iwaniec, Luo and Sarnakの結果は保型形式の空間を調べる上でold formに注目するということが不可欠であるということも示唆しており、一般のレベルでもold formに注目することの必要性を訴えている。今年度の結果としては一般のレベルの保型L関数を扱う上で、Iwaniec,Luo and Sarnakの次のステップと言える、素数幕のレベルに焦点を絞り、old formの構造を明らかにすることによってnon-vanishingの結果を得ることができた。更にold formの構造に注目することでnon-vanishingだけでなく、研究の目的である類数や他の特殊値の問題について今までとは違った情報が導ける可能性を模索した。
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