2007 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論の非摂動的効果・Dブレーンと場の理論のソリトンの研究
Project/Area Number |
19740125
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋本 幸士 The Institute of Physical and Chemical Research, 川合理論物理学研究室, 研究員 (80345074)
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Keywords | Dブレーン / 超弦理論 / ソリトン / 量子色力学 |
Research Abstract |
超弦理論は素粒子のすべての相互作用と物質を統合する究極理論としての役割を担っているだけではなく、その応用としてさまざまな場の理論の性質の解明が期待されている。特に、素粒子標準模型の一部である量子色力学はクォーク間の結合が強いため従来の場の量子論の手法が使用できない。本年度の研究業績となった成果は、弦理論の手法を量子色力学に適用し、従来得られなかった解析的な結果を得たものである。 まず、超弦理論のDブレーンに由来するホログラフィー対応を用いて量子色力学をそれに等価な高次元重力理論で解析するアプローチにおいて、クォークの質量をDブレーンの高次元幾何学的配置でどのように表現するかについて研究を行った。結果、インスタントンというソリトンをフレーバー自由度を表す高次元Dブレーンの上に入れておくと、それがクォークの質量をもたらすことを示し、パイ粒子の質量を弦理論から計算した。また、サイバーグ双対と呼ばれる超対称量子色力学の等価理論において渦ひも的なソリトン解を具体的に構成することで、量子色力学に存在すると仮定されてきた「QCDひも」を具体的に構成することに成功した。サイバーグ双対と渦ひもソリトンは、弦理論のDブレーンを用いてその性質を予言した。従って、弦理論の高次元的な無矛盾性が非常に大きな貢献をした研究成果である。 以上の研究成果を、今年度は全国20以上(台湾大学での招待講演を含む)の大学・研究機関で招待講演を行った。また超弦理論の世界的な国際会議である「Strings2007」に出席し研究成果を参加者と議論した。研究業績や、成果発表の際の研究交流で得られた知見は、今後本研究課題を進めていく上で中心的な重要性を持ち、ソリトンとDブレーンの関係、Dブレーンと超弦理論の非摂動的定義との関係の研究に生かされている。
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