2008 Fiscal Year Annual Research Report
真空紫外レーザーを用いた高分解能角度分解光電子分光による高温超伝導体の研究
Project/Area Number |
19740198
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石坂 香子 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (20376651)
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Keywords | 光電子分光 / 強相関電子系 / 高温超伝導 / レーザー |
Research Abstract |
本研究では、高いエネルギー・波数分解能及び偏光制御性を有するレーザー励起光電子分光を用いることにより、高温超伝導体の角度分解光電子分光(ARPES)を行っている。 Bi_2Sr_2CaCu_20_<8+d>(Bi2212)は壁開性が良く高い転移温度(T_c=90K)を示す高温超伝導体であり、これまでに数多くのARPES実験結果が報告されている。本年度は、この系におけるノード(d波超伝導ギャップがゼロとなる節)近傍の超伝導ギャップおよび準粒子スペクトルを詳細に測定した。その結果、過剰ドープ領域からホール濃度を減らすに従い超伝導ギャップは大きくなり、不足ドープ領域(x-0.1〜0.15)ではほぼ一定となることを確認した。また、温度依存性の測定より、ノード準粒子の散乱確率および群速度が転移温度T_cで急激に変化する様子が最適〜過剰ドープ領域において観測された。(投稿準備中) 一方YBa_2Cu_30_<7-d>(YBCO)は高温超伝導体の代表格であり、輸送特性、磁気測定など幅広い実験が盛んに行われてきたが、ARPESでは強い表面状態がフェルミ準位近傍を支配してしまうため、研究が敬遠されていた。この系でレーザーARPESを行うことにより、d波的な超伝導ギャップを示す明瞭な分散の観測に成功した。また、詳細な測定結果より、2層間の結合・反結合バンドの作る2枚のフェルミ面の分離や電子ボゾン相互作用を示すバンド分散のキンク構造の解析を行った。YBCO系でノード近傍を含む広い波数領域においてバルク超伝導を反映した準粒子分散が得られたのは初めてであり、Bi系や他の測定手法との比較を行ううえで重要である。(Phys .Rev. B誌に掲載確定)
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