2007 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム酸化物における「異常な」異常ホール効果と磁気構造
Project/Area Number |
19740203
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小林 義彦 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 助教 (60293122)
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Keywords | ペロブスカイト型Ru酸化物 / 異常ホール効果 / 格子変調 / Fermi面の再構築 / 磁気測定 / 電子輸送測定 / 放射光X線回折実験 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型Ru酸化物Ba_xSr_<1-x>RuO_3に代表される、強磁性かつ金属的電気伝導を示す酸化物において報告されている異常ホール効果の「異常」の有無およびその原因を明らかにするため、Ba_xSr_<1-x>RuO_3薄膜において磁気測定、電子輸送測定および放射光X線回折実験を行った。その結果、異常ホール効果について、SrRuO_3では(1)60K以下の低温では中間磁場領域で磁化ではスケールできず、約7Tの高磁場では消失する異常ホール効果の余剰項がある。(2)60K以上での異常ホール効果はこれまでの左右非対称散乱メカニズムで説明できる。(3)強磁性相と常磁性相では正常ホール係数・異常ホール係数とも大きく異なっており、未知の格子変調に伴うFermi面の再構築によりFermi面が異なっている可能性が高い。またBa_<0.2>Sr_<0.8>RuO_3薄膜においては異常ホール効果の特性(1)と(3)の特性がほとどなくなっていること、膜面方向垂直磁気異方性が著しく増大していることを観測した。また、放射光X線回折実験では、SrRuO_3の磁気転移温度以下での(000.5)の超格子反射の成長と60K以下での超格子反射の分裂すること、Ba_<0.2>Sr_<0.8>RuO_3では60K以下での超格子反射の分裂が存在しないことを観測した。以上の結果はSrRuO_3では2段階、Ba_<0.2>Sr_<0.8>RuO_3では1段階の格子対称性低下を示唆する。これは、格子変調に伴うFermi面の再構築が異常ホール効果の原因とする我々の考えを指示する結果である。
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