2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750062
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神崎 亮 Kyushu University, 理学研究院, 助教 (50363320)
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Keywords | 溶液化学 / プロトン性イオン液体 / 酸塩基平衡 / 自己解離定数 / 両性溶媒 / 電位差滴定 / 滴定カロリメトリー |
Research Abstract |
プロトン性イオン液体(PIL)[HB^+][A^-]中で、一部のイオンは反応HB^++A^-→B+HAによって中性分子HAおよびBを生成する. PIL中ではA^-とHB^+が溶媒であることを考えると、この反応は両性溶媒中における自己解離平衡に、その平衡定数K_<IL>=[HA][B]は自己解離定数に相当する. 本研究では、様々な酸と塩基との組み合わせにおいて自己解離定数pK_<IL>を水素電極およびIS-FET電極による直接測定によって決定し、原料となった酸および塩基の水溶液中における酸解離定数との相間について調べた. 超強酸であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、トリフルオロメタンスルホン酸、および強酸である硝酸を用いた組み合わせのPIL中では自己解離平衡が観測され、pK_<IL>は10に近いかそれ以上であった. 一方、弱酸であるギ酸、酢酸では自己解離平衡は観測されなかった. カロリメトリーによって生成分布を調べると、見かけのpK_<IL>は-1程度であり、酸と塩基の混合は必ずしもPILを生成するわけでなく、その構成イオンの酸塩基性に依存することが定量的に示された. 次に、典型的なPILである硝酸エチルアンモニウム(EAN)中における酸および塩基の溶存状態について熱力学的情報から明らかにした. 自己解離反応によるエントロピー変化は両性溶媒と逆転しており、PIL中における酸および塩基が中性分子であること、およびそれによって大きく溶媒和状態が異なることを反映している. 本研究ではさらに、生体分子を活性を保ったまま溶存させるなど興味深い応用例のあるEAN-水混合溶媒について同様の測定および分子動力学シミュレーションを行い、EANが水と同様に高い構造性を持つこと、およびその液体構造が組成に依存して変化することを見出した.
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