2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750073
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 正宏 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 助教 (90402453)
|
Keywords | 不斉水素化 / 触媒サイクル / 副鏡像異性体 / オレフィン / 重水素標識型式 |
Research Abstract |
Ru (OCOCH_3)_2((S)-binap)を用いて(Z)-3-フェニル-2-ブテン酸をメタノール中で水素化すると、低圧では97:3、100気圧では94:6のエナンチオ選択性でR体とS体が生成する。副鏡像異性体の生成機構を検証するべく、H_2/CH_3OD, HD/CH_3OD, D_2/CH_3OD条件で、オレフィン基質を重水素標識化し、キラルカラムで主・副鏡像異性体を分離し、両者のアイソトポマー比を比較検証した。その結果、Z基質はモノヒドリド機構で水素化されるがプロトン分解経路が優先し、生成物の一つの水素原子は水素分子よりもう一つは溶媒に由来する。すなわち、主鏡像異性体はモノとドリド機構、プロトン分解経路が優先して生成することが分かった。一方、副鏡像異性体は、ジヒドリド機構、およびモノヒドリド機構で1,4付加的に進行し、四員環メタラサイクル中間体を経る経路が共存する。この反応系においては、主鏡像異性体と副鏡像異性体の重水素標識型式が全く異なる。両鏡像異性体は全く異なった触媒サイクルを通って反応が進行し、ジアステレオメリックな反応遷移状態モデルを想定してはならない。効率的な不斉触媒反応を実現するためには、単に、「反応場の空間の制御」をするだけでなく、複雑に影響し合っている複数の触媒サイクルから目的とする触媒サイクルを選択しその回転速度を出きるかぎり早く、かつ寿命を長くする、いわゆる「時間の制御」が重要であることを示すものである。
|