2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19750073
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 正宏 Nagoya University, 教養教育院, 講師 (90402453)
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Keywords | 不斉水素化 / 触媒サイクル / 副鏡像異性体 / オレフィン / 重水素標識型式 |
Research Abstract |
不斉反応における主副触媒サイクルのエネルギー図や鏡像面選択性は、副鏡像異性体の起源を確認することなく、単一の反応機構が働く(A型 という大前提のもとに議論される傾向にある。これまでにRu(CH_3COO)_2(binap) を触媒に用いる(Z) -α-アセトアミド桂皮酸メチルの不斉水素化においては、A型サイクルであることが示されている。一方、基質の構造が変化する場合(B型) もあろうし、副鏡像異性体は全く異なった機構で生成する可能性(C型) もあろう。本研究では、3-フェニル-2-ブテン酸の不斉水素化を取り上げ、この問題を検証した。基質に(Z) -および(E) -3-フェニル-2-ブテン酸を取り上げ、H_2、HD、D_2ガスやCH_3OH、CH_3OD溶媒を用いて得られる主・副鏡像異性体の重水素標識パターンを精査した。Z基質を水素化すると低圧では97 : 3、100気圧では93 : 7のエナンチオ選択性でR体とS体が得られ、E基質の場合R体とS体が低圧では45 : 55、100気圧では65 : 35の比で得られる。これらの結果から、,Z体においては主鏡像異性体とジアステレオ的関係にある触媒サイクル以外に、全く異なる二種類の機構が関与して副鏡像異性体が生成することを見出した(C型) 。さらに興味深いことに、E基質においては、水素化生成物のγ位にDが導入される。このことは、副鏡像異性体は主に基質が異性化して発生するβ, γ-不飽和カルボン酸が水素化されて得られるものと理解できる(B型) 。これらを証拠をもって初めて示した例として注目される。
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