Research Abstract |
半導体放射線検出器では, 放射線を直接電気信号として計測するため, 従来用いられているシンチレーター型と比較して, 大幅に小型軽量化が可能となる. また, エネルギー分解能にも優れているが, SiやGe等を用いた素子では冷却が必要となる. そこで, 室温程度で動作する高検出効率, 高エネルギー分解能の放射線検出素子が強く望まれている. 化合物半導体の一種であるCdTeはシリコンやゲルマニウムに比べて放射線の吸収効率が高く, 室温動作を可能とする十分なバンドギャップ有することから, 半導体放射線検出素子としての応用, 研究が行われている. しかし, 高分解能を得るためにショットキー電極を形成し, 高電圧を印加すると, 検出時間の経過と共にピーク強度の低下や半値幅の増大等, 放射線検出特性が劣化するポラリゼーション現象が生じることが知られている. 本研究では, このCdTe半導体の結晶表面制御技術と電極形成技術の研究開発を行った. 従来, Inがショットキー電極として用いられてきたが, Alがショットキー電極として用いて素子を作製した. その結果, 241A皿からの放射線計測において, 半値幅が1. 5keV程度と高分解能素子の作製に成功し, Inと同等以上の特性が得られることを示した. また, Heプラズマによる表面処理及び硫黄処理を行うことにより, ポラリゼーション現象が大きく改善され, 従来3時間程度の連続計測しか行えなかったものが, 20時間の連続計測が可能になることを示した. また, Alを電極として用いることにより, In電極の時には難しかった電極分割が可能となり, 素子のピクセル化が容易になることを明らかにした. さらに, Tiもショットキー電極として有効であることを示した. 本研究で得られたこれらの表面処理及び電極作製技術の成果は, CdTe放射線検出素子の作製プロセスにおいて, 基盤的な技術になるものと考えている.
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