2008 Fiscal Year Annual Research Report
Sc含有Al-Mg合金及びAl-Mg-Si合金の高温疲労特性の評価と改善
Project/Area Number |
19760063
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
渡邊 千尋 Kanazawa University, 機械工学系, 准教授 (60345600)
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Keywords | 機械材料 / 金属疲労 / Sc含有Al合金 |
Research Abstract |
現在自動車車体用Al合金として代表的な5000系Al-マグネシウム(Mg)合金及び6000系Al-Mg-シリコン(Si)合金に, 高温における材料組織の安定化を目的としてスカンジウム(Sc)を添加し, 150〜2500Cの範囲で高温疲労特性の評価を行う.加えて得られた知見をフィードバックし微視組織制御による高温疲労特性の改善を目的とする. さらに, Scを添加した本合金系では, 高温までナノ結晶粒が安定化することが期待され, 優れた高温疲労強度を持つ材料を創製できる可能性がある.本研究ではこのことについても探る. 平成20年度は, Scを添加したAl-Mg-Si合金の析出挙動の調査並びに室温における基本的な機械的性質及び塑性ひずみ振幅制御疲労試験を行った. 二段時効を用いることで, 直径約10nmのAl_3Sc粒子と棒状β'(Mg_2Si)粒子を二重分布化することに成功した. 疲労試験の結果, 繰返し数に対して応力ひずみ振幅の変化を表した繰返し硬化曲線において, Scを含まない合金では初期硬化の後に疲労軟化を示したに対してScを含有する合金では初期硬化の後に塑性ひずみ振幅は飽和した. 疲労軟化を示した試料表面ではすべり帯が観察され, 変形の局在化が認められた. 試料内部を観察するとバンド状の転位組織が形成しており, 表面観察結果と良く対応している.また, このすべり体内で棒状β'粒子が運動転位により繰り返しせん断を受け破壊していることも明らかにした. 一方, 塑性ひずみ振幅が飽和したSc含有合金ではすべり帯が観察されず, また試料内部においても明確な転位組織は形成しておらず, 転位は巨視的に均一に分布していた.すなわち, 体積分率にしてβ'粒子の1/10程度のAl_3Sc粒子を共分散させることによって, 繰り返し変形時の変形の局在化を抑制することが可能であることを示した.
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