Research Abstract |
近年,繊維をナノファイバーにする技術が注目されており,ナノファイバー化により,力学特性の飛躍的な向上が期待できるとされている.しかし,ナノファイバーをはじめとする微小材料(マイクロマテリアル)の機械的特性評価手法は,未だ確立されていないため,ナノファイバーの物性や強度特性に及ぼす創製条件などについては,明らかとはなっていないのが現状である. 一方,地球温暖化などの問題から,植物を資源とする生分解性プラスチックであるポリ乳酸に関心が高まっている.ポリ乳酸の問題点の1つは,融点が170℃と低いことであるが,ステレオコンプレックスを形成させることで,融点が220℃に上昇すると報告されており,耐熱性を有するステレオコンプレックス型ポリ乳酸が注目されている. そこで,本研究では,溶融紡糸法など数ある紡糸法の中で,簡単にサブミクロンスケールの直径を持つ繊維を創製できる技術であるエレクトロスピニング法に注目し,生体への適用も可能な生分解性を有し,かつ,耐熱性に優れたステレオコンプレックス型ポリ乳酸ナノファイバーの創製条件の最適化を行った.エレクトロスピニングを行う際に,毒性の少ないジクロロメタンを用いることでクリーンな環境で,ステレオコンプレックスナノファイバーを製造することに成功し,直径が200-3500nmのファイバーを紡糸することが可能であった.さらに,溶融紡糸法を用いて直径が数十μm程度のステレオコンプレックス型ポリ乳酸繊維の創製を行うとともに,水環境や高温水環境が,繊維の機械的特性に及ぼす影響を検討し,ステレオコンプレックス型ポリ乳酸繊維がポリ-L乳酸繊維と比較して耐加水分解性に優れていることを明らかにした.
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