2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世風車建築群にみるオランダ環境共生型都市の秩序形成について
Project/Area Number |
19760449
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末次 宏成 Kyushu University, 知的財産本部, 学術研究員 (90432880)
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Keywords | 風車 / オランダ / 環境共生型都市 / ポルダー風車 |
Research Abstract |
平成20年度の研究期間の前半は、昨年度末に現地踏査した様々な風車のなかで、ポルダー風車(polder molen)に限定して調査、報告を行った。ポルダー風車は、15世紀初頭オランダにおいて、製粉用のポスト風車が排水用として改良されたオランダ固有の風車であり、風車内部で、風車守やその家族が住まうことが特徴的である。オランダ固有のハウジングという仮説的視点からポルダー風車建築の物的構成の類型考察を行った。成果報告として「オランダポルダー風車建築の技術史と類型について」と「オランダポルダー風車建築の類型と内部空間の変容について」と題し、日本建築学会に投稿し、口頭発表を行った。後半は、ポルダー風車4類型の構造体と内部空間の差異について、オランダへ現地調査を行い、風車内部空間の実測調査および風車守の生活と地域ネットワークについて資料収集やヒアリングを行った。 本研究の20年度の成果の概要として、ポルダー風車は、技術史から大きく4類型(ヴィップ風車、ビネンクロイラー風車、ボイテンクロイラー風車、スクリュー式風車)が確認された。4類型を対象に、風車の機構や構造体と内部空間を区別し、風車守とその家族の生活様態を「作業空間」と「生活空間」に分けて空間ボリュームと利用形態の相関性を比較した結果、技術史の発展だけでなく、風車守の作業性や家族の生活としての空間的な変形の様態が確認された。また、構造体に棚や寝具が組み込まれる家具等は、構造体と生活空間の隙間1に設置されるインテリア空間の特徴が読み取れた。また家族の人数に応じて居室やベッドが間仕切られる内部空間の柔軟性と分割形式が確認された。結果として、ポルダー風車は、土木技術の揚排水機能とは独立した住まいとしての建築空間的特徴が指摘された。治水という周辺環境をコントロールしながら、生活空間を保持する風車建築の空間性の一端が確認された。
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