2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19760454
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小岩 正樹 Waseda University, 理工学術院, 助手 (20434285)
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Keywords | 建築史 / 日本古代史 / 意匠 / 様式 / 建築生産 / 設計図書 |
Research Abstract |
本年度は、建築造営における「様」の役割と性格の解明を目的として、昨年度までに収集した事例をもとに、それぞれについて考察することを継続して行った。研究の方法としては、「様」の作成主体の意図・立場や、「様」の授受関係を追うことで進め、また建築遺構(史料、実際の建築)にみる形態の確認も合わせて行った。 1. 西大寺塔の「様]を僧侶思託が作成したという記録をもとに、西大寺塔の造営計画において思託の果たした役割と「様」の機能について、造寺司や寺家、詔勅との関係を通じて考察した!結果、本来の造営機関である造寺司ではなく思託が設計を行ったことの特殊性を述べ、それが詔勅によって「様]を作成することで成り立つ構造であった点を指摘した。成果は学術論文として投稿し、学会発表を行った。 2. 古代駅制の施行に伴い建造された駅家建築について、「様」によって造営するという記録を取り上げ、事例の収集確認と、駅家建築に求められていた性格について考察した。結果、駅家建築には共通した設計指針が示された可能性があることを確認し、また意匠的効果によって外国使節へ国威を示す方針と、一方でその維持管理の負担を省力化する方針の、双方を「様]によって示したことを明らかにした。成果については、学術論文としての投稿と学会発表の準備を進めている。 3. 「様」を介して進められた『正倉院文書』に残る天平宝字期の石山寺造営記録について、寸法値や製材・運搬過程が分かる約千三百余りの建築材料記録に着目して、史料の読解と内容の整理を行った。本事例については、継続して分析・考察を行ってゆく。
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