2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属複酸化物系ガス分離膜の動力学的組織変化の制御と長寿命化
Project/Area Number |
19760518
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 光敏 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (90376939)
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Keywords | 金属複酸化物 / 酸素分離膜 / 化学ポテンシャル勾配 / 動力学的組織変化 / 欠陥構造 / 拡散係数の酸素分圧依存性 / イオンの流束 / イオンの流束の発散 |
Research Abstract |
本研究では,金属複酸化物系ガス分離膜の動力学的組織変化を定量的に予測することで,現実の使用条件をパラメーターとして酸素分離膜に生じる組織変化を系統的にまとめ,長時間の使用に耐えうる金属複酸化物系ガス分離膜の設計指針を提案することを目的として研究を行ってきた。 今年度は,酸素分離膜の動力学的組織変化を実験的に観察した。昨年度に引き続き,金属複酸化物系の酸素分離膜としてSrCo_<0.8>Fe_<0.2>O_<3-δ>(SCF)を選択し,これを固相反応法によって作製した。その結果,貫通孔のない焼結体を得ることができた。この試料の両端にArガス(低酸素分圧側)およびN_2-21%O_2混合ガス(高酸素分圧側)を流し,1173Kにおいて試料を604.8ks保持した。実験前と実験後のそれぞれについて,酸素分離膜の両端の組織観察を行った。試料の中央部では,酸素分離膜の両側において顕著な組織変化は観察されなかった。また,実験中に酸素分離膜の両端には,約1桁の酸素分圧差がついていた。これより,試料の中央部では組織変化が緩やかに進行したと考えられる。一方,試料の端では酸素分離膜の両側に顕著な組織変化が見られた。高酸素分圧側ではSr酸化物が形成していた。低酸素分圧側では粒状のCo酸化物が一部析出し,その直下の表面組織は酸化物が分解したような形態になっていた。さらに微細な組織変化も観察された。今後,組織観察を継続し,酸素分離膜中の組織変化の形態を明らかにしていく。 他方,今年度も相分離しない条件下における酸素分離膜中の動力学的組織変化について,その定量的な計算を試みたが,陽イオンの拡散係数に関するデータを収集することができず,具体的な計算結果を得るには至らなかった。今後,これらの材料中の陽イオンの拡散係数や標準生成ギブズエネルギー変化を実験的に測定していく必要がある。
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Research Products
(2 results)