2007 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な結晶構造を有するベリリウム金属間化合物における水素同位体照射効果
Project/Area Number |
19760598
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩切 宏友 Kyushu University, 応用力学研究所, 助教 (80325480)
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Keywords | プラズマ・核融合 / 計算物理 / 金属物性 / 水素 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本年度は、Be_12Tiにおける独特の欠陥形成挙動本計算では実験結果を理解するために、以下のような欠陥反応仮定を仮定し、計算機シミュレーションを行った。 (1)照射によって試料中に導入された点欠陥は試料中に一様に導入される。カスケード損傷の効果は考慮しない (2)これらの点欠陥は熱的に移動することが可能である。 (3)試料中を移動している原子空孔と格子間原子が結合すると消失する。また、これらの点欠陥が表面などの欠陥に対するシンクに到達した場合も消失する。 (4)格子間原子は二次元的に集合して転位ループを形成する。 (5)転位ループからの格子間原子の熱的な解離は無視する。 なお(4)については転位ループを形成する場合と形成しない場合の双方について考慮した。モデリング計算の結果、転位ループが形成される状況下では、格子間原子は転位ループに優先的に捕獲されていく。その結果、試料中に原子空孔が大量に蓄積されることになる(例えば1dpaのときの濃度が10<-2>である)。一方転位ループが形成されない状況を仮定した場合、1dpa程度の照射では原子空孔の濃度も10<-4>程度に留まる。空孔集合体の発生・成長のメカニズムは複雑ではあるが、試料中における原子空孔濃度がある程度の水準に達する必要があることは十分に理解されており、この条件下では空孔集合体が形成されにくいことは明らかである。以上の結果より、Be_<l2>Tiにおいてボイドが形成されにくい本質的な原因について解釈することができた。すなわち、Be_<l2>Tiは結晶構造が複雑であるため転位ループがまったく形成されない。転位ループが存在しないと試料中を動き回る格子間原子の濃度が高い水準で保たれる。格子間原子の濃度が高いと原子空孔濃度は必然的に下がり、原子空孔集合体、つまりボイドの形成が行われにくくなると考えられる。
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Research Products
(1 results)