2008 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な結晶構造を有するベリリウム金属間化合物における水素同位体照射効果
Project/Area Number |
19760598
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
岩切 宏友 University of the Ryukyus, 教育学部, 准教授 (80325480)
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Keywords | 核融合炉材料 / 水素同位体 / 反応速度論 / 照射効果 / 透過型電子顕微鏡 / 格子欠陥 / ベリリウム金属間化合物 / ナノ構造 |
Research Abstract |
今年度は中性子照射下におけるベリリウム金属間化合物の水素同位体捕獲特性の予測を目標とした各種実験及び計算機によるシミュレーションを行った。試料は高温等方加圧(HIP)法製Be12Ti(BeO : 1.32wt%)を使用した。試料を加工後、高エネルギーイオン発生装置を用いて重イオン照射を行い、その後透過型電子顕微鏡による内部微細組織観察をおこなった。Be12Tiの結晶粒径は数100nmから数μm程度であり、Be12Tiの単相組織であった。また、一部の領域で双晶境界が観察された。また、結晶粒内には潜在欠陥はほとんど存在していなかった。2.4MeVのCu2+を室温で1, 5dpaまで照射しても、試料内部に転位ループ・ボイドなどの欠陥は一切観察されなかった。調査した限りでは、他種の金属材料及びその合金においては、1dpa以上の照射領域では必ず転位ループやボイドが形成されることと比較すると、極めて特異な現象である。このことはBe12Tiの複雑な結晶構造(tI26)と関係すると考えられる。 この現象を解明するための一つの手段として、反応速度論を用いた計算機シミュレーションを行った。計算の詳細は割愛するが、転位ループが形成されると仮定して計算を行った場合、照射領域に多量の原子空孔の蓄積が見られるが、転位ループの安定成長が行われない状況を想定した計算を行うと、試料中における原子空孔の濃度が著しく低減化される。 以上の結果より、Be12Tiにおいてボイドが形成されにくい本質的な原因について解釈することができる。すなわち、Be12Tiは上記したように結晶構造が複雑であり転位ループがまったく形成されない。転位ループが存在しないと試料中を動き回る格子間原子の濃度が高い水準で保たれる。格子間原子の濃度が高いと原子空孔濃度は必然的に下がり、原子空孔集合体、つまりボイドの形成が行われにくくなる。このメカニズムは、当然、水素同位体の捕獲機構にも大きな影響を与えていると予測される。
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Research Products
(1 results)