2007 Fiscal Year Annual Research Report
河川を流下する陸上有機物の代謝過程と流域呼吸の推定
Project/Area Number |
19770013
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岩田 智也 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (50362075)
|
Keywords | 富士川流域 / 陸上有機炭素 / 分解速度 / 呼吸活性 / 源流河川 / 炭素循環 / スパイラルレングス / 溶存酸素 |
Research Abstract |
平成19年度は,水系内における陸起源有機物の分解速度を測定し,河川食物網が陸域から海洋への有機物フラックスに及ぼす影響を流域スケールで定量評価した。調査は富士川流域の源流域(1次河川)から最下流(6次河川)で行い,流域内から選定した18河川で河川の生態系代謝速度を測定した。河川生物群集の呼吸速度は溶存酸素の日変化をモニタリングして推定し,さらに培養中に生成した呼吸CO_2の炭素安定同位体比から陸上有機物を基質とする呼吸速度(分解速度)を推定した。各河川で得られた推定値は河川次数ごとに整理し,GISを用いて流域全体へ空間補間を行った。その結果,陸上有機物を基質とする呼吸速度は6次河川で最も高く(8tC basin^<-1>d^<-1>),最下流部のみで流域全体の約64%の陸上有機物を分解していることを明らかにした。しかし,陸上有機炭素が無機化されるまでの平均回転距離は流量10m^3/sの大河川では100km以上と長く,6次河川を流下する陸上有機物の大半は駿河湾へ流出していると考えられた。また,流域の末端に位置する1次河川でも陸上有機物を基質とする呼吸は高く(2tC basin^<-1>d^<-1>),流域全体の約16%を担っていた。さらに,1次河川における平均回転距離は短く(流量0.O1m^3/sの小河川で約2km),陸上有機物は源流域で効率よく無機化されて大気に脱ガスしていることを明らかにした。本年度の調査により,富士川水系では6次河川が陸上有機炭素の代謝に最も寄与していること,また源流河川の食物網も海洋への有機物輸送に大きく影響していることを明らかにした。
|