2008 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の性的二形の進化に雄性ホルモンの免疫抑制効果を通じた性淘汰が果たす役割の解明
Project/Area Number |
19770015
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
高橋 大輔 Nagano University, 環境ツーリズム学部, 准教授 (90422922)
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Keywords | 生態学 / 性淘汰 / ハンディキャップ原理 / 免疫能 / 雄性ホルモン |
Research Abstract |
平成20年度は19年度と同様に調査対象種(オイカワ、ヌマチチブ、ウグイ)の雄の雄性ホルモン〔テストステロン(T)、11-ケトテストステロン(KT)〕血中濃度と二次性徴形質および寄生虫への罹患率との関連性について解析を進めた。その結果、オイカワではTならびにKTとも繁殖期(8月)に上昇し、そしてTおよびKT濃度が高い個体ほど二次性徴形質である追星の数が増加する傾向が見られた。一方、尻鰭サイズと両ホルモンとの間には関連性は見られなかった。雄の婚姻色と雄性ホルモンとの関係については現在解析中である。平成20年度の結果は、少なくとも雄の追星は雄性ホルモンに依存して発現する形質であることを示唆する。本種では、寄生虫が全くみられなかったため、雄性ホルモンと免疫能との関係については、雄性ホルモンと現在予備実験を行っている血中リゾチウム濃度との関連性から調べる予定である。また、雌の配偶者選択性の室内実験では、雄の各種二次性徴形質と雌の選好性との間に関係性が認められなかったが、平成20年度は実験例数が少なかったため、21年度も室内実験を行い、雄の二次性徴形質と雌の選好性との関係を調べる予定である。オイカワと同様にヌマチチブでも繁殖期(8月)にTおよびKTが上昇する傾向が認められた。そして、二次性徴形質である第一背鰭サイズとKTとの間に正の関係が見られた。寄生虫数と両ホルモンとの間には関連性はみられなかったことから、本種では免疫適格ハンディキャッンプ仮説が示唆する雄性ホルモンによる免疫能の低下は起こらないのかもしれない。雄性ホルモンと免疫能との関連性については、オイカワと同様にリゾチウムと雄性ホルモンとの関係をみることで、平成21年度により詳細に調べる予定である。ウグイにおいては、統計解析を行うに十分量のサンプルを採集することができなかった。平成21年度は漁協などに協力を依頼し解析に必要なサンプル数を確保する予定である。
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