2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19770056
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (70432010)
|
Keywords | シクリッド / 種分化 / 嗅覚 / VlR型嗅覚受容体 / ビクトリア湖 / アリル頻度 / フェロモン受容 |
Research Abstract |
本年度の研究において私は魚類嗅覚受容体の中の1つ、「V1R」に着目してその遺伝子を単離した。V1R型嗅覚受容体遺伝子は魚類ゲノム中に6コピー存在していることが明らかになっており、今回Haplochromis chilotesのBACライブラリーをスクリーニングすることでその全ての遺伝子を単離することに成功した。その遺伝子配列をもとにプライマーを設計し、ビクトリア湖産シクリッド各種のゲノムDNAを鋳型にPCRし各V1R遺伝子の配列を決定したところ、6個あるV1R遺伝子の中の1つ、V1R2遺伝子が、ビクトリア湖のグループで多様化していることが明らかとなった。つまり、ビクトリア湖産シクリッドにおいて複数の異なるV1R2アリルが存在し、そのアリル頻度が種毎に異なっているということである。ビクトリア湖産シクリッドは放散を遂げてまだ1200年しか経過しておらず、種間の遺伝的な違いは非常に小さいと考えられているにも関わらず、V1R2遺伝子頻度が種間で大きく異なるということは、この受容体を介した嗅覚行動が何らかの強い選択圧を受けていることを示唆しており、この遺伝子がビクトリア湖産シクリッドの種分化や種多様化に関わっている可能性が出てきた。V1R型嗅覚受容体のリガンドはまだ明らかにされていないが、性成熟に関わるフェロモン様物質を受容するとも予想されており、その受容システムが種間で異なるということは種分化を考える上で非常に興味深い。今後は、そのアリル頻度の違いと種の生態学的な情報を合わせ、そのアリル頻度の違いが進化上どのような意味合いを持つのかを考察していきたい。
|