2008 Fiscal Year Annual Research Report
カタユウレイボヤにおける生殖細胞形成の分子機構解析
Project/Area Number |
19770203
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
倉林 麻貴 (白江 麻貴) The Institute of Physical and Chemical Research, 生殖系列研究チーム, 研究員 (60391942)
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Keywords | 生殖細胞形成 / 生殖質 / 母性RNA / 転写抑制 / ホヤ / Ciona intestinalis |
Research Abstract |
多細胞動物の生殖細胞関連分子のうち、Vasa Nanos Tudorなどは広く種を超えて保存されている。しかし一方で、種特異的な分子が生殖細胞形成初期に重要な役割を示す例もある。例えば、ハエや線虫の生殖系列細胞は発生初期に包括的な転写抑制状態にあるが、これはそれぞれ種特異的な分子(PgcやPie-1)が独自の作用機序によって核内RNA polymerase IIの活性化を抑制することによるものである。従って、多細胞動物の生殖細胞形成は、いくつかの関連分子は保存されつつ、それぞれの種で多様な進化を遂げたと考えられる。 申請者はホヤの生殖質と考えられるpostplasmに局在する母性RNAの翻訳産物の機能解析を行い、ホヤの生殖細胞形成に重要な役割を持つ分子の絞り込みを行っている。 本年度は、昨年度に続きホヤ特異的なpostplasmic RNA遺伝子であるCi-PEMのタンパク質局在と機能の解析を行った。申請者は既にCi-PEMタンパク質が卵割期にpostplasmに局在し、初期胚の卵割パターン形成に重要な役割を持つと考えられることを報告している。本年度はさらに1) Ci-PEMタンパク質が卵割期にpostplasmを含む後極割球の間期核に局在する事、2) 後極割球は卵割期に転写抑制状態にあると考えられるが、Ci-PEMの翻訳阻害によってこの抑制が解除されることが分かった。しかしホヤでは、ハエや線虫と異なり、胚後極割球核内におけるRNA polymerase IIの活性状態は他割球と相違が見られない。従ってCi-PEMは新規のメカニズムによって生殖系列細胞における転写を抑制していると予想される。 今後さらにCi-PEMによる転写抑制機構の解析を行う事で、多細胞動物の生殖細胞における転写抑制の意義や普遍性への理解が深められると考えている。
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