2009 Fiscal Year Annual Research Report
カタユウレイボヤにおける生殖細胞形成の分子機構解析
Project/Area Number |
19770203
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
倉林 麻貴 (白江 麻貴) The Institute of Physical and Chemical Research, 生殖系列研究チーム, 研究員 (60391942)
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Keywords | 生殖細胞 / 生殖質 / 母性RNA / 転写抑制 / Ciona intestinalis / ホヤ / PEM / Groucho |
Research Abstract |
多細胞動物の生殖細胞では、分化初期に包括的な転写抑制が起こる事が知られている。これは周囲の体細胞分化誘導シグナルから生殖細胞を保護する為と考えられる。近年ハエ・線虫で明らかとなった生殖系列細胞における包括的転写抑制因子(Pgc, PIE-I)は動物群特異的であることから、このメカニズムは動物群ごとに個々に進化したことが示唆される。ハエ・線虫以外の動物の生殖細胞における転写抑制メカニズムに関しては、ほとんどが不明のままである。 申請者は、ホヤ特異的な生殖質RNA遺伝子であるCi-PEMの翻訳産物がホヤ生殖系列細胞における包括的転写抑制に重要な役割を果たす可能性を見いだし、重点的に機能解析を行った。Ci-PEMタンパク質は生殖割球の間期核に局在し、Ci-PEM翻訳阻害によって生殖割球に体細胞分化関連遺伝子の異所的発現が見られた。さらに本年度は1)レポーター解析によりCi-PEMが生殖割球においてbeta-catenin/TCF、 GATA双方の転写因子による遺伝子発現を抑制していることを明らかにし、2)哺乳類培養細胞発現系を用いた免疫沈降実験においてCi-PEMが転写抑制因子GrouchoのホモログであるCi-Gro1, Ci-Gro2と共沈することを示した。従って、Ci-PEMは生殖割球核内でGrouchoと関係し、様々な転写因子に依存する遺伝子発現を抑制している可能性がある。ハエのPgcや線虫のPlE-1は、転写装置RNA polymerase IIの活性化を抑制する。一方でGrouchoは特定の転写因子に結合することで転写装置に作用し、またオリゴマーを形成してクロマチン構造を変化させ、転写抑制を導くと考えられている。本研究は生殖細胞における転写抑制系の新たなモデルを提示するとともに、Grouchoによる転写抑制機構の解明に向けた新たな手がかりとなりうるものである。
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