2009 Fiscal Year Annual Research Report
地下生活への適応度合いによる視物質遺伝子の適応進化に関する研究
Project/Area Number |
19770209
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
篠原 明男 University of Miyazaki, フロンティア科学実験総合センター, 助教 (50336294)
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Keywords | モグラ科 / 適応進化 / オプシン / 地下生活 / コウベモグラ / 半地下生活 / ヒミズ |
Research Abstract |
洞窟など光のない環境で生活する哺乳類の光受容感覚器官は、形態学的には一般的に退化していくことが知られているが、近年になり盲目であると考えられてきた哺乳類の光受容感覚器官が、なんらかの機能を果たしている分子生物学的な証拠が明らかとなってきている。そこで本研究においては、地下への適応度が異なるモグラ科の視物質遺伝子を調べることによって、徐々に地下生活に適応してきた哺乳類の視物質遺伝子の適応進化の過程を明らかにすることを目的とした。地下生活型のコウベモグラMogera woguraおよび半地下生活型のヒミズUrotrichus talpoidesのオプシン遺伝子を同定し、系統解析を行った。その結果、オプシン遺伝子のエクソン領域内は両種問で5.4%の違いしか存在せず、地上生活を行うマウスとラット問の変異(5.7%)程度しかないことが明らかになり、エクソン領域が高度に保存されている事が明らかになった。さらに両種のオプシン遺伝子の進化学的特性を明らかにするために、マウス、ラットおよびヒトのオプシン遺伝子と比較することによって自然選択(dN/ds)の検出を試みた。その結果、dN/ds<1.0(負の自然選択)が検出され、すなわちヒミズとコウベモグラのオプシン遺伝子には機能的な制約があることが示唆された。この結果から、半地下生活を行うヒミズ類から地下生活を行うモグラ類にいたる進化の過程において、オプシン遺伝子はなんらかの重要な機能(例えば、サーカディアンリズムなど)を保持してきたことが明らかになった。
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Research Products
(3 results)