2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外環境に応答したNADP(H)/NAD(H)比制御の分子機構と生理的意義
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19780057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河井 重幸 Kyoto University, 農学研究科, 助教 (00303909)
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Keywords | NADキナーゼ / NADHキナーゼ / NADP(H) / NAD(H) / ミトコンドリア / 酵母 / 酸化ストレス / 環境応答 |
Research Abstract |
NADP(H)とNAD(H)は膨大な生体内反応に関わり、且つ両補酵素の機能が全く異なるため、NADP(H)/NAD(H)比の変動は生体内代謝系および細胞活動に甚大な影響を及ぼすと予想される。同比制御の鍵となる酵素の一つがNADキナーゼ(NADK)である。しかし、生体内NADP(H)/NAD(H)比制御機構へのNADKの寄与に関しては、不明点が多く残されている。ほとんどの生物(大腸菌を除く)のNADKは、NADとNADHの両方をリン酸化する活性を示す。これは、NADKは、NADのリン酸化活性によるNADP合成またはNADHのリン酸化活性によるNADPHの合成を通じて、NADP(H)/NAD(H)比制御機に寄与し得ることを意味する。しかし、どちらの活性が生理的に重要であるかは不明であった。本研究により、真核生物のモデル生物である出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeのミトコンドリア(Mit)型NADK(Pos5p)のNADHキナーゼ活性が、細胞の生育ならびにMitの機能に必須ではないことを明らかにした。すなわち、POS5のプロモーターの下流およびシグナル配列(Mitへの輸送に必要)の下流に、大腸菌由来NADK(YfjB:NADHのリン酸化活性を示さない)を連結したキメラプラスミドを構築し、これを酵母NADK三重欠損株yeflutrlpos5(ただしYCp-UTR1のはたらきにより致死とならない)に導入した。プラスミド・ジャフリングによりYCp-UTR1を欠落させたところ、酵母は生育性を示した。これは、酵母の生育性にNADHキナーゼ活性が必須ではないことを意味した。さらに、Mitの機能に関わる表現型も評価したところ、シグナル配列を有するYfjBがArg要求性と酸化ストレス感受性を相補したが、同配列を持たないYfjBは相補しなかった。細胞をMitと細胞質画分に分画し、各画分のNADK活性を測定することにより、シグナル配列のはたらきによりYfjBがMitへと輸送されたことを実証した。これらの結果は、Mitの機能にNADHリン酸化活性が必須でないことを意味した。以上の結果は、細胞の、特にMitの機能にNADHキナーゼ活性が重要であるとする従来の知見に修正をせまる成果となった。
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