2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19780153
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北野 慎一 Kanazawa University, 地域連携推進センター, 特任助教 (20434839)
|
Keywords | 漁業・漁村の多面的機能 / 景観 / 類型化 / 経済評価 |
Research Abstract |
前年の調査では国民の漁村景観に対する認知度は低く、その価値を認識する水準にはいたっていないことが明らかとなった。そこで、漁業・漁村の多面的機能を発揮していると思われる日本国内の事例をピックアップし、一般市民の方が景観に対して持つ様々なイメージに基づいて、その類型化を試みた。具体的には、インターネットを用いたアンケート調査を実施し、漁村景観に対する国民の意識調査を行った。結果、国民全体として(1)「干潟」や「海女漁」といった沿岸域の景観に対して「懐かしさ」や「親しみやすさ」を感じている、(2)「漁火」「カキ筏」といった沿岸域の平面的景観に対しては「幻想的」や「美しさ」を感じている、(3)「舟屋群」や「帆びき船」といった古来の建造物や構造物に対しては「歴史的価値が高い」や「教育効果がある」を感じている、(4)その他「帆びき船」や「定置網」や「漁火」などは「壮大さ」を感じている、といったようなイメージによる4類型が可能であることが明らかとなった。 これらの類型のうち歴史的価値や教育効果があるといった国民に対して直接的な便益が発生していると思われる事例を取り上げ、実際に経済評価を試みた。具体的には伝統漁業の景観を実際に観光事業に活用している岐阜県長良川の鵜飼事業を分析対象とし、伝統漁業が発揮する外部経済効果の計測を行った。特にレクリエーション的側面に着目し、トラベルコスト法を用いて評価を行った。当該地域では鵜飼を観光資源として位置づけ、自治体が財政支援することにより、伝統漁業が維持継続されている。財政支出が創出される公共サービスに見合うものかも併せて検討した。結果、一定のレクリエーション的価値が創出されていることが確認されたが、財政支出に見合うものではなかった。今後は直接利用価値以外の価値の評価も進め漁業景観が創出する価値全体を評価する必要がある。この点は今後の課題とする。
|