2008 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀の神経毒性発現に関与する脳浮腫発生の分子機構
Project/Area Number |
19790110
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
廣岡 孝志 Hokuriku University, 薬学部, 研究員 (50397519)
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Keywords | メチル水銀 / 脳浮腫 / 内皮細胞 / 周皮細胞 / 血管 / VEGF / 脳 |
Research Abstract |
メチル水銀による中枢神経系障害の最大の特徴である部位特異的な脳傷害の発生メカニズムとして, メチル水銀による脳微小血管系の機能障害と脳浮腫の形成による循環不全により脳の特定組織の神経細胞が傷害されるとする「浮腫仮説」が有力である。本研究の目的は,この「浮腫仮説」の分子基盤を明らかにすることである。脳微小血管の透過性亢進は浮腫発生の重要なメカニズムの1つであり,微小血管の透過性の亢進に決定的な役割を果たす生体システムとしてVEGFシステムが知られている。そこで,細胞培養系を用いてヒト脳微小血管構成細胞におけるVEGFシステム関連タンパク質の発現に対するメチル水銀の影響を検討した。その結果,メチル水銀は脳微小血管を構成する2つのcelhype-内皮および周皮細胞-に対して特異的な作用を示すことを明らかにした。すなわち, メチル水銀は内皮細胞に対してはVEGFシステムにおいて主要な機能を担うVEGF-Aの機能的受容体VEGFR2およびそのデコイ受容体VEGFRlの発現を上昇させた。また, VEGFRIに選択的に結合して間接的にVEGF-AのVEGFR2の応答性を高めるVEGFファミリーの一員であるPIGF, およびVEGF-AのVEGFR2への結合を促進する補助受容体Neuropilinの発現上昇も確認された。一方, 周皮細胞においては, メチル水銀はVEGF-Aの発現を上昇させていた。そこで,VEGF-Aの遺伝子発現に関与する転写因子の1つであるHypoxia inducible factor(HIF)-1αおよび-2αのメチル水銀による活性化を調べたが,HIF-1αおよび-2αのメチル水銀による活性化は確認されなかった。これらの研究結果は, VEGF-Aの内皮一周皮自己/傍分泌型システムが脳微小血管におけるメチル水銀の毒性発現の標的であり, その活性上昇により誘発される血管透過性の亢進が「浮腫仮説」の分子基盤であることを示している。
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Research Products
(5 results)