2007 Fiscal Year Annual Research Report
腸管病原性大腸菌によって誘導される癌転移抑制作用の解析および抗転移ワクチンの創製
Project/Area Number |
19790317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 武 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特任助教 (60418655)
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Keywords | 細菌感染 / 癌転移 |
Research Abstract |
本研究課題では、腸管病原性大腸菌のマウス感受性細菌であるCitrobacter rodentiumがマウスに感染すると、その後、癌の転移に対して抵抗性を示すという発見に基づいて研究を遂行した。本年度では、この癌転移作用の詳細なメカニズムの解明と、ワクチンとしての候補株をスクリーニングするための変異株作成を行った。 まず、C. rodentiumをマウスに感染させた後、3〜6週間後に、マウス悪性黒色腫であるB16F10細胞を尾静脈より静注し、2週間後に肺に転移したB16F10細胞の転移巣の数を数えた。その結果、6週間たっても依然として、転移の阻害作用を保っていた。また、感染後3週間では、C. rodentiumはほぼ完全に除去されており、完治に近い状態であるため、感染による炎症反応によって阻害されたのではないことが明らかとなった。次に、癌の転移作用は、何によって引き起こされているのかを検討した。その結果、腫瘍免疫で中心的な役割を果たしている、腫瘍特異的細胞障害性T細胞(CTL)、ナチュラルキラー細胞(NK)およびNKT細胞などについて活性化を検討したが、C. rodentiumが感染したマウスと非感染マウスの間には、大きな差は認められなかった。しかし、C. rodentiumに感染したマウスより採取した血清を、B16F10細胞とともに静注すると、肺への転移は大きく阻害された。つまり、血清中の何かの成分によって阻害作用が引き起こされていることが明らかとなった。以上の結果を、第81回日本細菌学会総会において、発表予定する 抗転移ワクチン株の探索として、マクロファージや樹状細胞に細胞死を引き起こさない変異株を検討中である。そのために、現在知られているIII型分泌装置より分泌されるエフェクターの変異株を作成した。今後、これらを用いて、各種アッセイをしていく予定である。
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