2008 Fiscal Year Annual Research Report
分岐鎖脂肪酸によるキャリアーリピド依存型細胞壁物質合成・輸送阻害に関する研究
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19790322
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新垣 隆資 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (40294417)
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Keywords | 分岐鎖脂肪酸 / swarming / 菌体外多糖 / タイコ酸 / ECA / サーファクタント |
Research Abstract |
分岐鎖脂肪酸(12-メチルテトラデカン酸, 12-MTA)が細菌に示す作用の解析モデルとして、直接的に増殖を阻害しないグラム陰性菌のswarming運動阻害についての検討を進めた。swarming運動により寒天平板上を広がる際のコロニー性状はウェット状となる。12-MTAはこのコロニー性状変化を阻害し、乾燥したコロニー性状をもたらす。swarming運動では菌体表層多糖ならびに菌体外に分泌される多糖様物質、界面活性物質が重要な役割を担うため、これらの物質産生に対する12-MTAの作用について解析を行った。12-MTA添加・非添加の通常LB寒天培養における菌体LPS電気泳動分析の結果、大腸菌K-12株のコアLPSならびに、緑膿菌のLPS構造については非添加のものと違いは認められなかった。一方、swarming菌体のLPS電気泳動像では規則的なラダー様構造に加えてスメアな染色像を呈したが、12-MTA添加によりこの像はほぼ消失した。swarming培地上に産生される緑膿菌菌体外物質についての解析の結果、この物質はサーファクタント活性を有している事が示唆され、現在この物質の分析ならびに合成・輸送におけるプロセスの各段階における12-MTAの阻害活性について解析を進めている。研究初年度よりグラム陽性菌に対する12-MTAの作用ターゲットとしてタイコ酸合成酵素TagOの疎水性の高い内部アミノ酸配列に対する相互作用について解析を行ってきたが、このTagOホモログである大腸菌のECA合成酵素WecAの類似配列に対しても12-MTAは高い結合性を示した。メチル分岐を持つ分岐鎖アミノ酸は最も高い疎水性スコアを示すが、分岐鎖脂肪酸はこれらに富んだ配列に対して高い親和性を示す脂質である可能性が考えられ、膜タンパク質の膜内安定性や機能発現制御に深く関わる重要な生体分子として働いているかもしれない。
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Research Products
(1 results)