2008 Fiscal Year Annual Research Report
血中シアロ糖タンパクと病態との関連性に関する研究 -病態シアロームの提唱-
Project/Area Number |
19790397
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 義政 Kyushu University, 大学病院, 臨床検査技師 (80419514)
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Keywords | 血中シアロ糖タンパク / シアル酸 / ノイラミニダーゼ / プロテオミクス / 二次元電気泳動 / 質量分析 |
Research Abstract |
平成19年度に、試料とする血清の前処理方法ならびに二次元電気泳動法について、本研究課題の目的に見合ったプロトコールの確立を行った。ところが、血清は血液を凝固させて得られるものであるため、生体内における血中タンパクの動態をより網羅的にとらえるためには、血液凝固というプロセスを介さずに得られる血漿を試料として用いる必要があるという考えに至った。すなわち、血漿を用いることで、血液凝固に伴うフィブリノーゲンをはじめとする血液凝固因子やその他諸因子の分解や損失を回避することが可能となる。また、世界的な動向として、HUPO(The Human Proteome Organisation)が主催するHPPP(Human Plasma Proteome Project)を踏まえたうえでも、やはり試料には血漿を用いるべきと考え、平成20年度は血漿を試料としたときの前処理条件を検討した。 血漿を得るためには、血液を採取する際に、抗凝固剤の添加が必要となるが、現在、臨床検査に用いられる抗凝固剤は複数種存在し、頻度良く用いられるものとしては、EDTA、クエン酸、ヘパリンがあるため、これら抗凝固剤の種類の違いによる検討を行った。 血漿は、あらかじめAgilent社製のMultiple Affinity Removal SpinCartridge Hu-PL7により、血漿中にアバンダントに含まれる7種類のタンパク(アルブミン、IgG、IgA、α_1-アンチトリプシン、トランスフェリン、ハプトグロビン、フィブリノーゲン)を除去後、試料とした。 抗凝固剤の違いにより、アバンダントな蛋白の除去効率が異なるという結果が得られた。特にフィブリノーゲンの除去効率には明らかな違いが認められ、EDTAを用いたとき残存率が高いことがわかった。しかしながら、クエン酸、ヘパリンを用いた際においても、必ずしもフィブリノーゲンが完全に除去されるわけではなく、むしろ、安定してフィブリノーゲンが残存すること、検査室の現場において使用しやすいことを考えると、血漿を試料とする場合には、むしろEDTAが望ましいと判断した。 これまで血漿を試料として二次元電気泳動を行う際、用いる抗凝固剤についてはあまり議論されることは無かったが、我々は臨床検査に応用することを想定しているため、検査室の現場で安定して、再現性ある結果を出すためには、今回の検討は非常に意義があるものと考えている。
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