2008 Fiscal Year Annual Research Report
病原微生物及び細菌毒素による死因の法医鑑定を構築するための研究
Project/Area Number |
19790452
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
藤浪 良仁 National Research Institute of Police Science, 法科学第一部, 主任研究官 (30335632)
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Keywords | 法医鑑定 / 感染 / マススペクトル / 機能分子 |
Research Abstract |
【目的】不安定な世界情勢により生物テロの危険性が高まっている。我が国においても、地下鉄サリン事件に先行してオウム真理教団がボツリヌス菌培養液や炭疽菌培養液の散布を行なった事件が発生しており、より早急な対策が望まれている。そこで今回我々は、病原細菌により感染死した個体を対象に、感染臓器のイメージングマスによる識別を試みた。【実験方法】BALB/cマウスに致死量の莢膜発現炭疽菌を静脈内接種し、死亡後に摘出した臓器を高圧蒸気滅菌あるいはホルマリン固定による滅菌確認後、凍結切片を作製した。凍結切片は、導電性フィルム及びスライドガラスに載せ、スプレー法あるいは滴下法によりMALDI用マトリックス溶液を臓器表面に塗布し、デシケーターで乾燥させた。このように得られた試料を対象に、MALDI-MS Imaging解析を行った。【結果】血液培地で誘導した莢膜発現炭疽菌の特徴ピークは分子量1641で得られたが、感染死したマウスの脾臓からこの特徴ピークは得られなかった。それに代わって感染臓器と健常臓器のマススペクトルを比較したところ、感染臓器の特有ピークが分子量1232と分子量1249の2本が得られた。またこれら2つの特有ピークをイメージングしたところ、臓器中の分布が僅かに異なることが観察された。【考察】今回人工的に莢膜発現させた炭疽菌の特徴ピークは感染臓器から得られず、培地中の人工的な莢膜発現と生体中での莢膜発現は異なることが考えられた。一方検出された感染臓器の特有ピークが、炭疽菌が被感染個体の生存中に活動していたという感染死の証明に役立たないかと考えている。また本手法は、他の病原細菌及び細菌毒素による感染死にも応用可能と思われる。
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Research Products
(1 results)